卯年に想う

           広島市立大手町商業高等学校 校長 岡田俊夫


「検食」。2階の食堂で、生徒が食べる30分前に給食をいただく。給食日記にチェック
項目を記入し、「良好」と書く。温かく、栄養バランスも良く、そのうえ安価な給食は実に
おいしく、続けていきたい制度である。それも調理員2名の愛情がそうさせるのだが、教
室では見せない生徒の笑顔を見つけやすい場所でもある。

私も窓際に座り、すぐ側を流れる元安川の風景を楽しみにしている。まさに風を感じる
し、季節を感じる。ちょうど目の位置に校旗がたなびき、商業高校
(商いの神)校章の2匹
の蛇も気持ちよさそうである。

この時間帯は川土手に犬の散歩をよく見かける。私も7年目、一方的に眺め、勝手に決
めている犬の「常連さん」。歳を重ねている犬は引っ張る力が弱くなったように見える。
いや、飼い主思いで共に年をとり、優しい散歩になっているのかもしれない。

人が往来している姿もある。何かのダンスの練習をしている人もいる。土のせいか、走
っている姿もある。季節により、服装はもちろんのこと、歩き方さえ違うように映る。こ
の短い時間のうちに、対岸の人たちも、鳥たちも、子ども達の動きも見える。

特に、桜並木なので、開花の季節は給食が花見弁当に化ける。郷土食もあり、また、ク
リスマスが近づくと食堂全体がそのムードいっぱいになる。テーブルに蝋燭の灯りでいた
だくので、ロマンチックこの上ない。とにかく「穏やかな」一日の始まりである。

以前から、定時制では給食時間は交流の場であった。そこには、席はどうであれ一緒に
食べる空間がある。大手商の表情をよく表している。まさに、温かい空間。

一方で、本校校舎は52歳を迎える。創立はそれよりも40年も歴史があり、92年目となる。
全国には岡山県高梁市の吹屋小学校は現役校舎で、現在も
5名の児童が学んでいる。明治33
(1900)創立の校舎も、残念なことに今年は廃校の予定である。すでに多く木造校舎は、
特に過疎地において統合や廃校・休校になっている。

私の思い出の中にも、綺麗で長い廊下であったり、洒落た校舎であったり、校庭に大きな
木があったり、まさに母校、母に似た温かさを感じる。木造校舎は思い出の原点として、懐
かしい風景の中心に出てくる。本校も、ひろい心を育てる学舎でありたい。

さて、今年はうさぎ年。先日、鏝絵の写真を見る機会があった。鏝絵は左官仕事のお礼の
心意気である。昔は蔵などに、龍、鯉、七福神が繁栄を祈り、火伏せを願う。特に、私は
「波うさぎ」が好き。波は水であり、火伏せを意味する。干支のうさぎは、昔から安産と子
孫繁栄の守護神で、故事にならい獣神ともされる。土蔵仕事をやり終えた喜びのなかで精魂
込めて描いている。広島市では西区草津地区に多く残っている。

最後に、さらにうさぎに因んで表現すれば、私は卯年であり、本校も卯年に、存在は静か
でも、飛び跳ねる準備はできている。                 
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